新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『明日ちゃんのセーラー服』で好きなキャラクターベスト7

視聴者のフェティシズムを刺激する様々なカットやキャラの仕草が特徴的だったアニメ『明日ちゃんのセーラー服』。毎回、主人公・明日小路のクラスメイト達に順番にスポットを当て、彼女たちの繊細な心理や小路との交流を描いていった。

というわけで、今日は『明日ちゃんのセーラー服』に出てきたクラスメイトの中で私が個人的に可愛いと思った子をランキング形式で発表することとする。

早速、7位から発表とするが、ランク外の子も別に嫌いというわけではないので悪しからず。この手のランキングは作中で出番が多かった子ほど上位になりがちなので、もしアニメ2期があって別の子のメイン回があれば順位は変動する可能性が高い。

第7位 峠口鮎美さん

出席番号10番。CV:三上枝織
訛りにコンプレックス持ってる子に悪い子はいません。真面目で良い子だけどどこか薄幸そうな見た目なのが良い。明日ちゃんのクラスの中で一番ツッコミが上手い子。

第6位 戸鹿野舞衣さん

出席番号11番。CV:白石晴香
寮でも学校でも、蛇森さんのこと、メッッッッッッッッチャ見てるよね。いつも蛇森さんの傍に寄り添い、助言をし、温かい眼差しを向けている。常盤みどりちゃんみたいな、後方見守り系の素質ある。戸鹿野さんと蛇森さんの絡みだけ一生見続けたい。

第5位 水上りり さん

出席番号13番。CV:石川由依
どことなくミステリアスで作中ではトリックスター的存在と言える。本作は基本、明日ちゃんが各キャラにグイグイ迫るスタイルだが、水上さんだけは逆になっている。小路と江利花が下の名で呼び合うまであれだけウジウジと時間かけてたのに、水上さんは速攻で小路と呼び捨てにする積極性が素晴らしい。

第4位 兎原透子さん

出席番号2番。CV:鬼頭明里
クラスのムードメーカー的な存在だけど内心では色々考えて行動していて繊細なところも。しかも、お菓子づくりが得意という家庭的な一面もある。蝋梅学園一、笑顔が輝いていて、また、おデコも光っている。『けいおん!』の律、『ゆゆ式』のゆず子のようなポジションのキャラと言えるだろう。

第3位 大熊実さん

出席番号3番。CV:小原好美
蝋梅学園の秋山殿の異名を持つ小柄なショートカットの子。名前とは裏腹に子犬みたいで可愛い。生き物や人間観察が好きな変わり者で、そのせいでクラスで浮いちゃったりしてないか心配(謎の父親目線)。小原好美ボイスの小さい子が出てきたらもうお父さん目線でしか作品見れないですよ。

第2位 龍守逢さん

出席番号8番。CV:伊瀬茉莉也
学級副委員長を務める真面目で負けず嫌いな子で、口調は厳しいが優しい一面も垣間見える。その性格と眼鏡から、スタァライトの星見純那ちゃんを思い浮かべた人も多いだろう。部活などで息を切らしながら懸命に走ってる姿が印象的。真剣な表情と、まれに見せる笑顔とのギャップが素晴らしい。もっと出番を見たかったキャラクター。

第1位 蛇森生静さん

出席番号15番。CV:神戸光歩。
ギター弾けないのに強がって弾けると言っちゃうところ、他の子が部活などで頑張ってる姿を何とも言えない表情で見つめる感じとかがもう、ザ・思春期って感じで最高。デレマスの多田李衣菜ちゃんとかユーフォの夏紀先輩とかが好きな人にはメッチャ刺さるキャラクターだと思う。ギターを持ってはしゃいでて戸鹿野さんに目撃されるところ、明日ちゃんに大声で応援されて恥ずかしがるところなど、言動が思春期真っ盛りの自意識こじらせた少年みたいで最高に可愛い。

というわけで1位は蛇森さんでした。どちらかというと、アニメ的で記号的なキャラクターよりも、複雑かつ繊細な内面を持つキャラが上位に多いですね(1位の蛇森さんがその典型)。

アニメ『平家物語』感想

古典としての『平家物語』を聞きかじった人間は、ともすれば『平家物語』の中に道徳的な教訓、例えば「驕り高ぶりは身を亡ぼす」的なものを連想しがちである。しかし、山田尚子監督がインタビューで「叙事詩ではなく叙情詩としての『平家物語』を描いた」と述べていたように(TVアニメ「平家物語」監督:山田尚子インタビュー〈前編〉 - YouTube)、原作がうまく再構築され人間ドラマとしての側面を浮き上がらせたアニメ化だったと思う。

本アニメでは平清盛の孫にあたる維盛や資盛がクローズアップされるわけだが、よく知られているように平家は清盛やその父の代で多くの武勲を上げ、貴族を凌駕するほどの権力を得るが、子や孫の代になると次第に貴族化し力を失っていく。なので平家の一門は、清盛の権力を笠に着てオラついてる奴とか、血筋は良いけど戦はできない無能、みたいな描かれ方をされがちである。

実際、資盛は平家の驕りの始まりとされる殿下乗合事件を引き起こし、維盛は富士川の戦いで鳥の羽音に驚いて逃走するなど、平家滅亡の戦犯であることは否めない。それでも、アニメが進んでいくうちに、彼らのことが愛おしく思うようになってくる。決して完璧な人物ではないが何故か憎めない、時代に翻弄されながらも懸命に生きた一人の人間として浮かび上がってくる。

そして、それは作中でなくなった全ての人々に向けての鎮魂の物語という意味合いを持つようになる。ただ祈る事、語り継ぐ事こそが、最大の供養であり鎮魂。またそれは、定型化された文章としてだけでなく、琵琶法師が声によって何百年も連綿と語り継いでいったことで、鎮魂の物語として完成したと言っても過言ではない。まるで人々の間に伝播するミームのように、能や歌舞伎やアニメといった当時最先端の表現技法も取り入れながら代々受け継がれたことが、この物語を唯一無二の存在として成立させているように思う。

そういう意味で言えば、平家物語はこれからもずっと、その時々の最先端のクリエイターによって多種多様に語り継がれ、それによって根底にある鎮魂という役割を果たし続ける物語なのだと言えるだろう。

『からかい上手の高木さん』と小豆島

ちょうど『高木さん』のアニメ3期が終わりそうだし、この前ブラタモリでも小豆島が出てきた*1ので、小豆島に行ってきた時の写真を上げる。

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エンジェルロードと呼ばれる有名な観光地。典型的な陸繋島の形をしている。
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土渕海峡。世界一狭い海峡としてギネスブックに登録されている。
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西光寺と狭い路地。日々野ミナちゃんが歩いてそう。

島には2つの自治体があり、人口は合わせて約2万9千人ほどである。『からかい上手の高木さん』でもお馴染みだが、古い家や細い路地が多く、江戸時代の商人町の名残が見られる。古くから町が発展してきた理由についてブラタモリでは次のように説明している。

小豆島の地層は安山岩・火山角れき岩・花崗岩の3層から成る。最上部に安山岩が乗ってる事で水や風による浸食が進まず島として残った。花崗岩が風化してできた砂(真砂)はオリーブ栽培に最適であり、さらに気候等の条件も良かったため、小豆島は日本一のオリーブの産地となる。一方、火山角れき岩が風化してできた土は粘土質で稲作に適しており、多くの棚田も形成された。その棚田の閑農期に小麦を栽培していたことから、素麺の産地へと発展。同時に素麺作りに欠かせないごま油も作られるようになった。また、小豆島の花崗岩は海岸近くにあり船で運びやすかったため、日本各地の藩が石を切り出しにやってきた。彼らが醤油を持ち込んだことで小豆島でも醤油生産が始まり、原料の一つである塩も大量に取れた(真砂でできた海岸線には塩田がたくさんあった)ため、醤油の一大生産地へと発展していった。

つまり、明治期に栽培が始まったオリーブは別としても、小豆島では古くから素麺・ごま油・醤油が生産されていたので、商人の多く集まる町ができたというわけである。瀬戸内海の小さな島にもかかわらず、なかなかの人口があるのはこういう理由のためである。

*1:余談だが、番組内ではいたるところで高木さんのBGMが使われていた。

『ステラのまほう』感想

この怪作を心の中でどう整理すればいいのか判断がつかないでいる。

主人公・本田珠輝は高校入学と同時にSNS部(死んだ魚の目 日照不足 シャトルラン部)に入部し、先輩の村上椎奈、関あやめ、藤川歌夜たちと共に同人ゲーム製作に打ち込んでいく。SNS部のOGであり創設者である百武照は、物語前半では、時々部にやってきて珠輝に助言したりするいわゆるトリックスター的存在だった。ところが中盤以降、きらら系の萌え4コマ漫画とは思えないような驚くべき展開になっていく。

まず、照先輩が第一志望の大学に落ちていたことが発覚。さらに、滑り止めで受かった大学すら自主退学し、浪人生となっていることも判明。時折語られる照先輩のモノローグや台詞からは、他者を信用せず、極端に刹那的で達観的な内面が垣間見える。

生きることは 全てエゴだと私は思ってる
何かを消費し 誤ちを犯し 誰かを傷付ける
誰かの為に行動し 誰かと一緒に人生を歩もうとする
ああいう在り方が 私には恐ろしくて 妬ましいんだ
(第7巻、73ページ)

私が生きる理由は ただ死ぬためなんだ
(中略)
ただ 後悔しながら自殺したくないから やる前にこのライフを飽きるまで楽しんどこ~って
(第8巻、99ページ)

ひぇっ…! 闇が深いっ! 照先輩、闇が深いよ…。このあたりにくるともう読者は、SNS部の行く末と同じくらい、照先輩がどうなってしまうのかが気になって仕方がなくなる。

語られる照先輩の過去。いわゆる毒親的な母親に育てられたことで、自罰的な思いを募らせるようになった照先輩。他人を信用できず、高校でも部活を転々とする生活を送っていたが、卒業間近でたまたま関あやめ達と出会い、SNS部でのゲーム製作を楽しむこととなる。だが、自分のような存在がSNS部に関わっていいのだろうかという思いに苛まれた照先輩は、最終第10巻で部屋に置き手紙をして失踪してしまう。

照をここまで追いつめられたのは一体何故だったのだろう。それは、照の中に築かれた「城」が崩れたからではないだろうか。他者を誰も信頼することができず、自分の内面を他人に見せることを怖れる照が、自らの心に築いた城。その城の中に身を隠すことで、なんとか心を安定させ、高校生活を送っていた照。だが、想定以上に深く長くSNS部の面々と関わっていく中で、その城はボロボロに崩れ、照の心は壊れていったのだ。

だがそれでも、照は最後に少しだけ救われて物語は幕を閉じる。照先輩と出会ったことで人生が変わったSNS部の後輩たち。彼女たちの存在が、彼女たちがかける言葉が、照を闇から救い出す。でもそれは、歌夜自身が言っていたように、照先輩を縛り付ける新たな呪いなのだろう。けれども、この呪いが無ければ、照先輩は自ら命を絶っていたかもしれない。照にとって呪いでしかないと思っていたSNS部との繋がりが、照先輩をかろうじでこの世に繋ぎ止めたのだ。

人は繋がりの中でしか生きていくことができない。人と人との出会いや繋がりが、まるで「まほう」のようにその人の人生を変え、未来を照らし出す。SNS部という名を象徴するようなテーマだが、それはこの作品の一部でしかないだろう。才能と努力、クオリティと納期のバランス、きょうだいや親との関係、承認欲求、作品を晒す羞恥心との戦い――。創作活動に関わるありとあらゆるテーマを散りばめながら平成・令和の時代を駆け抜けた、唯一無二の4コマ漫画として、『ステラのまほう』は4コマ漫画の歴史に残り続けるだろう。

うるしパイセン可愛すぎ問題

早くも第10巻発売だが、全く勢いは衰えずもうキュンキュンしまくりである。

特に良かったのが第126話。下校中に雨に降られ神社で雨宿りする歩とうるし先輩なのだが、驚くべきことにこの回だけ、うるし先輩が攻めてるのである!

この作品はいつも歩の方が何か言って、それに対してうるし先輩が赤面して「んあっ!」ってなるのがデフォなのだが、この回に限ってはかなりうるし先輩の方が攻撃側に回ってるのである。これは例えるな虹みたいなものだろう。太陽の角度やら雲やら、あらゆる条件が奇跡的にそろって初めて見ることのできるレアな現象。

普段攻められてるヒロインが不意に攻めに回った時に見せる圧倒的な可愛さ、もう最高である。いい作品というのは巻数が増えてもマンネリ化することなく、こうして日々新しい切り口を持ってくる。

7月にはアニメも始まるので、今年はうるし先輩の年になると思う。