新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

2011-01-01から1年間の記事一覧

『ドラえもん』『荒川アンダーザブリッジ』に見る現代社会の病理―流行と権威主義

『ドラえもん』と流行 まだ声優が大山さんだった頃のアニメ版ドラえもんに「のび太ニューファッション」という話があるんだけど、これが実に良く「流行」というものの本質を表現していて面白い。ジャイアンが主将を務める少年野球チームでは、Tike(もちろん…

『魔法少女まどか☆マギカ』についての2つの論点―「魔法少女の救済」と「まどかの自己犠牲」

はじめに 『魔法少女まどか☆マギカ』の最終回について語る場合、次の2つの観点から考察できると思う。1点目として、本来ならば魔女になるはずだった魔法少女達は、まどかによる世界の改変によって魔女になることなく消滅できるようになったわけだけど、そう…

『ゆゆ式』と『けいおん!』の比較―同じ日常系4コマ漫画でも「感情の振幅」は異なる

『ゆゆ式』3巻を読んで思ったことを少しだけ話してみる。言うまでもないことだけど、この作品も、前に自分が述べたような『けいおん!』や『Aチャンネル』と同じ系譜の中にある。つまり大まかに言えば、最近流行りの「日常系4コマ漫画」ってことで一括りにさ…

『Aチャンネル』と『けいおん!』の比較―るんとトオルとの微妙な距離感

『Aチャンネル』と『けいおん!』は、出版社が同じということもあり、今後いろいろと比較されると思う。両作品の共通点として、主要登場人物の相関が「複数の先輩と、一人の後輩」という形になっていることが挙げられる。しかし、『けいおん!』ではキャラクタ…

『緋弾のアリア』に学ぶ国際政治―各勢力についての要点整理を兼ねて

(※注)『緋弾のアリア』に関する重大なネタバレがあります。原作ライトノベル9巻まで読んでない方はご注意を。 『緋弾のアリア』第8巻以降の勢力図 『緋弾のアリア』は、第5巻においてイ・ウーが壊滅し、一区切りがついたと言って良いでしょう。しかし、イ…

性と暴力の東京武偵高校―『緋弾のアリア』とアメリカ銃社会

(※注)『緋弾のアリア』に関する重大なネタバレがあります。原作ライトノベル9巻まで読んでない方はご注意を。 『緋弾のアリア』に描かれるもう一つの日本 4月からMF文庫Jの『緋弾のアリア』がアニメ化されるので、その前に原作を読んでみたんだけど、この…

ファスト風土化するライトノベル―『半分の月がのぼる空』と「地方の閉塞感」

ファスト風土化とライトノベル 今更『半分の月がのぼる空』について書くのもどうかと思ったが、やはり気になる点があったので簡単に書き留めておく。この作品で描かれていることは、それはもちろん、不条理に奪われていった(もしくはこれから奪われるであろ…

ドラえもん映画と「リアリティ」―『ドラえもん のび太と鉄人兵団』私論1

小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団作者: 瀬名秀明,藤子・F・不二雄出版社/メーカー: 小学館発売日: 2011/02/25メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 270回この商品を含むブログ (34件) を見る私はまだ中学生の頃、はじめて『パラサイト・イヴ』を読んでSF小…

突然性と奇跡について―『Angel Beats!』論から『魔法少女まどか☆マギカ』における救済の方法を探る

奇跡って、なにも、現実に起こらないことである必要はないと思う。実現する可能性が0%だろうと100%だろうと、そんなのは割とどうでもよくて、ただ本当に重要なのは、当人が叶えられると思っているかどうか、という点だ。 (中略) 日向はユイに、彼女…

肩書き通りじゃなくても良いじゃなイカ!―『倭トトは神様である!』『侵略!イカ娘』から見る現代社会

「らしくない」ことが可愛さを生む 倭トトは神様である! (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)作者: 大宮祝詞出版社/メーカー: 一迅社発売日: 2011/02/22メディア: コミック購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (6件) を見る本屋の4コマ漫…

日常系アニメの中の戦争―『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』を見て感じた胸の痛み

なんだか『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』を見終わった後に、心苦しいというか、胸が痛くなるような感覚に襲われて、「この感覚って一体何なんだろう」としばらく考えこんでしまいました。おそらく、何の罪もない普通の少女達が戦いに巻き込まれてゆくという展開こそ…

嵐山歩鳥は「変わってしまう日常」を前に何を思うのか―『それでも町は廻っている』の台詞から

『それでも町は廻っている』の作品構成は非常に変わっている。この作品では雑誌や単行本に掲載された順番と、作中の時系列とが一致していない。例えば、8巻61話「大怪獣 尾谷校に現わる」では歩鳥は高校3年生になっているが、同64話「サインはB!」では歩鳥た…

「佐天さん問題」を考える(2)―ミクロな視点から『とある科学の超電磁砲』を見てみよう

はじめに 今回の記事は、先日書いた『「佐天さん問題」を考える(1)―マクロな視点から『とある科学の超電磁砲』を見てみよう』の続編になります。先日は、学園都市というシステムが抱える問題点を考察することで(すなわちマクロな視点から考察することで…

「佐天さん問題」を考える(1)―マクロな視点から『とある科学の超電磁砲』を見てみよう

はじめに 今回と次回の記事では、これまでとは趣を変えて、私の思いのたけを声を大にして叫びたいと思います。まず結論から言わせてもらえば、「佐天さんがあまりにも可哀想だから何とかしろ!」という話です。学園都市でレベル0というレッテルを貼られ、ど…

反戦アニメの表現2―『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』と不条理について

『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』(以下『H.O.T.D.』と略)には、残虐でグロテスクな表現が多いとよく耳にしますが、私はそんな風に思ったことはありません。おそらく、アニメで表現できることには限りが有りますから、原作ではもっとグロテスクな表現…

反戦アニメの表現1―『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』のアイキャッチについて

今更ながらアニメ『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』を見て、風景描写の緻密さや演出の上手さにびっくりしているのですが、今日は本作が持つメッセージ性について少し話そうと思います。さて、本作を1話から順に追って行く過程で多くの人が考えたことは、「この作品はい…

アニメ・ライトノベル・マンガを考察する、とはどういうことか―『けいおん!』『WORKING!!』から考える

はじめに 今回の記事では『けいおん!』と『WORKING!!』という2つの作品について述べるが、あくまでも例としてこの2作品に焦点を絞るだけであって、実際にはあらゆる作品に当てはまることについて考察をしたいと思う。私がこのようにしてブログで意見を述べて…

神の居ない世界で人はいかにして救われるのか―『Angel Beats!』と「神の不在」「心の救済」について

はじめに 私は以前、「それでも「生きることは素晴らしい」と言う究極の「人生讃歌」―『Angel Beats!』私論」という記事を書いてAngel Beats! のテーマ的なところを考察しました。今日はまた違った観点からこの作品を考察してみたいと思います。さて、Angel …

皆が幸せになることをあきらめないという選択―『とらドラ!』に見る「幸せ」の有り方

誰一人も犠牲にすることなく、全員が幸せになるような選択は有り得るだろうか。時と場合にもよるが、そのような選択は極めて難しいと言えるだろう。また、他の皆の幸せのために、自らが犠牲になるという選択は許されるのだろうか。そして、誰かの犠牲によっ…