新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『かぐや様は告らせたい』のかぐや様が最高すぎる件

年末年始に『かぐや様は告らせたい』第1巻から第3巻までを読んだんですけど、これ、本当に素晴らしい漫画です。内容をざっくり言うと、エリートが集う名門校の生徒会長・白銀御行と、副会長・四宮かぐやは、もうすでに両想いの関係なんですが、2人とも超プライドが高くて「自分から告白したら負け」とか考えてるので、どうにかして相手に告らせようと奮闘する、っていうクッソ面倒くさい2人の描く学園ラブコメなんですが、以下の参考記事にもある通り、キャラクターがみんな魅力的で、特に、かぐや様が死ぬほどお可愛いんですよ!

『かぐや様は告らせたい』3巻、やっぱりかぐや様は大変お可愛いんですよ! | ヤマカム
『かぐや様は告らせたい』1~3巻が面白い!/告白一歩手前というラブコメの一番美味しいところ! やまなしなひび-Diary SIDE-

まず第一に、超一流企業のご令嬢らしいクールで清楚な外見がお可愛いんですが、そんな外見とは正反対の子どもっぽい行為をしてくるのが、ギャップ萌えで凄いお可愛いんですよね。

例えば、御行が持ってきたお弁当を見て目をキラキラ輝かせてもの欲しそうにしてる。お可愛い。使用人に勧められてネイルを付けてみたのに、それを御行が気付いてくれなくて拗ねる。お可愛い。御行に電話するだけなのに超テンパってあたふたしてる。超お可愛い。

それだけなら普通のラブコメとあまり変わらないんですが、かぐや様の場合、超プライドが高いので「子どもっぽいところを見られたら恥」みたいに考えて平静を装ってるんですね。御行のお弁当に入ってるタコさんウインナーが欲しくても、プライドが邪魔して言えない。携帯のアドレス知りたくても、自分から聞いたら負けなのできけない。実にお可愛い。

そんな感じで自分の感情を押し隠そうとしてるんだけど、全然隠しきれてなくてメッチャ表情に滲み出てるのも超お可愛いですし、そんな葛藤の末に、思考回路がパンクしちゃって言動がもう訳分かんないことになっちゃってるのがもう、最高にお可愛いんですね。

もうすでに多くの人が言っていることですが、とにかく、かぐや様の言動すべてが最高にお可愛いんですよ。

作者・赤坂アカさんの前作である『ib-インスタントバレット-』(関連記事:「インスタントバレット」、これは正義の物語ではなく悪者の物語でもない:ヤマカムセカンド)、その第一巻を読んだ瞬間から、この作者は天才だと思っていましたが、まさか次作がここまで素晴らしいとは…。個人的には、今、一番面白い漫画だと思いますね。

2016年下半期アニメ総評

2016年下半期に見たアニメの総評です。

上半期のアニメの総評はこちら→2016年上半期アニメ総評 - 新・怖いくらいに青い空

Re:ゼロから始める異世界生活

ナツキ・スバル、愚かだねえ…。やることなすこと全てが論理的じゃない。ただ感情に流されるまま、何も考えずに行動して、自分で自分の首を絞めていく。人の話を聞かずに突っ走って、闇雲に暴れまわって、他人を傷付け、自分を傷付けていく。そんな愚かさを反省するどころか、完全に開き直って、自分の心の醜い部分を臆面もなく曝け出して、周囲に喚き散らして、ますます自分を窮地に追い込んで行く。本当に、愚かだねえ…。

でも、愚かさもここまで突き詰めれば、伝説になる。特に、スバルが王都で心身ともに追い込まれていく第13話から第18話までは、悔しいけれど、メチャクチャ面白かった。その中でも第13話は、極限状態でただ闇雲に暴れることしかできなかった他の回とは異なり、ほぼ100%スバル側の落ち度、身から出た錆、弁明の余地なしという感じだったので、スバルの痛々しさと見苦しさが、その迫真の顔芸とも相まって、一番鮮明かつ印象的に描かれており、本作の白眉とも言える回だったと思う。

この美術部には問題がある!

以前の記事でも書いたように、内巻君が可愛すぎて生きるのがつらい…。次点で、宇佐美さんもメチャクチャ可愛かった。でも、他のキャラクターがすごく微妙。特に、部長とか立花先生はちょっとウザすぎて、こんなタイプの人とはなるべく関わり合いたくないなあって思ってしまった。

NEW GAME!

第4話で八神さんが「青葉が楽しそうな顔してるうちは大丈夫。ゲームがつまらなかったらあんな顔しない」って言ってたのが何故か印象に残っている。なんというか、「自分達の作ったものがちゃんと売れるか?」みたいな細かい心配をするのは、八神や遠山みたいにある程度キャリアを積んだ人の仕事で、入社して日が浅いうちはただ無我夢中で楽しみながらスキルを身につければそれでいい、という作中の仕事観みたいなものがよく表れてる台詞だと思うのだ。

一番好きなキャラはぶっちぎりで八神さんだった。良くも悪くもガサツであっけらかんとした性格のように見えて、意外とシャイで繊細だったりするのが可愛いのよね~。

91Days

最初は復讐のためにアヴィリオがネロに近づいただけだったのに、いつしか憎しみや怒りを超越した複雑な関係性になっていくというストーリーは、『僕だけがいない街』とも似ている。大切な人を奪われ、復讐を果たした後に、抜け殻のようになってしまったアヴィリオと、全てを失ってもなお「生」に執着し続けたネロ、という対比も良かった。

ラストの浜辺のシーンでネロはアヴィリオを殺したのだろうか。私は殺したと思う。ガラッシア・ファミリーの関係者(?)がネロ達の後をつけていた描写は、「ネロが殺そうが殺すまいが、どのみちアヴィリオは死ぬしかなかった」ということを表しているのだと思う。

第4話が丸々全て蛇足だったり、最終回が謎演出すぎて意図がよく分からなかったり、いくつかの不満点はあるが、何やかんやで最後まで楽しめた。

クオリディア・コード

アニメ『クオリディア・コード』総評 - 新・怖いくらいに青い空

上の記事に書いた通り。残念だねえ。期待していたのになあ。

クロムクロ

個人的にロボットアニメはあまり好きじゃないし、正直、2クールもかけてやる内容かと思う時も多かったけど、結局最後まで視聴できた。かと言って特段面白かったかと言えばそういうわけでもなく、終始可もなく不可もなくという感じ。

バーナード嬢曰く。

1話3分という短い時間でさわ子と神林が早口でセリフを捲し立てているのが気持ち良かった。久しぶりにキタエリの当たりキャラを見た、っていう感じ。エンディング曲も良かった。

ブレイブウィッチーズ

びっくりするほど前作と差があるなあ。作画にしろ、演出にしろ、ストーリーにしろ、本当に全てにおいて、『ストライクウィッチーズ』の方が優れていた。まあ、若干の思い出補正があるのは否定しないけどね。

才能のない人が努力によって這い上がり仲間から認められるまでを描くというのは分かるんだけど、主人公だけじゃなくて他キャラクターについても深く掘り下げていかないと、一体何のための502なのって話になる。視聴者に対して、【1】まずこの子はこんなキャラですってのを見せて、【2】次に実はこんな意外な一面もあるんだよという部分を見せて、【3】最後にそのキャラクターを形作る芯となる部分まで見せていく。501の方は、いつもハチャメチャなことやっているようで、そのへんはしっかりしていたんだけどなあ。

好きなキャラクターはロスマン先生。普段はクールで厳しい先生なのに、クルピンスキーがキャビアを台無しにした時は、メッチャ取り乱してて可愛い。だからこそ、もっと内面を掘り下げて描かないとダメだ。今作は各キャラせいぜい【2】くらいまでしか表現できてません。残念。

終末のイゼッタ

世間ではイゼッタとフィーネの百合描写が素晴らしいと言われているけれども、個人的にはその周辺に魅力的なキャラクターが多くて群像劇的な見方もできる作品だと思った。敵であるゲール側のキャラも、祖国への忠誠心や野望や復讐心など、それぞれ異なる動機に突き動かされて戦っているのがきちんと描かれ、作品に重厚感が増していた。台詞のほとんどないモブ(例えば、最終回でジークハルトを撃った新兵)に至るまで、かけがえのない物語を背負って生きているんだということが感じられた。

戦争映画で例えるなら、『史上最大の作戦』とかに近いものがあると思う。敵・味方に関係なく、それぞれの登場人物にそれぞれのドラマがあって、単なるイゼッタとフィーネの物語として終わっていないのが素晴らしい。

響け!ユーフォニアム2

『響け! ユーフォニアム2』総評 - 新・怖いくらいに青い空

上の記事で述べた通り。2016年のNo.1アニメでした。

フリップフラッパーズ

まだ最終回は見てないので、見終わったら感想書くかもしれない。

毎週楽しみに見ていた作品だけど、ちょっとよく分からないなあ、というのが正直なところ。ピュアイリュージョンとは一体なんなのか? ヤーコプ・フォン・ユクスキュル(作中に出てくるユクスキュルの元ネタと思われる人物)が提唱した「環世界」という概念と関係ありそうですが、まあ、よく分からないですね。

『響け! ユーフォニアム2』総評

ひとまず、各キャラについて、これまでいくつかの記事で述べてきたことをまとめました。

久美子の成長

すでに他の方も指摘している通り、第2期になって改めて、久美子役の黒沢ともよさんの演技の素晴らしさを実感できましたね。私の第1話の記事でも述べましたが、場面場面によって声のトーンがガラリと変わるのが本当に素晴らしかったです。葉月とかと一緒にいるとき(猫かぶりモード)は全然普通なのに、麗奈といるときは心底面白いものを見るような「隙あらばじゃんじゃんいじめてやるぞ~(ゲス顔)」みたいな声になって、家族や秀一の前ではとにかく面倒くさそうな無愛想な声になってる。この切り替えが素晴らしいんです!

あと、泣きながら必死に絞り出すようにあすか先輩に気持ちを伝える時の演技も良かったし、誰かに声かけられて「わっ」とか言って驚くときの声とか、面倒くさいことに遭遇してすごい嫌そうに話してる感じとか、もう今年のアニメで一二を争う名演だったんじゃないでしょうか。

一方、久美子の内面的成長という観点も第2期は特に強調して描かれていました。最初のころの久美子は自分の気持ちを極力表に出さない、エゴを通さない、ただ周囲に流されるだけ、という感じでした。それは、そうしているほうが人間関係の波風も立たなくて楽だし、そのぬるま湯的な場所からあえて出ていく明確な動機もなかったからでした。ところが、どんなことがあっても自分を曲げない麗奈や、親に言われるがまま吹奏楽を辞め大学に進んだ麻美子さんと心を通わせる中で、次第に自分も「後悔」しない選択をしたいと思うようになります。そして、最後に久美子は、自分の意志であすか先輩に戻ってきてほしい、一緒に全国に行きたい、と言うことができたわけです。

しかし、この作品において、そうやって自分のエゴを通すということは、それによって生じる「責任」を受け止めるということでもあるわけです。たとえば、年功序列じゃなくて一番上手い人がソロを吹くべきとエゴを通すことで、香織先輩はソロを吹けないということになります。これは「犠牲」と言い換えてもいいかもしれません。これは久美子の場合も例外ではなく、あすか先輩が戻ってくるということはまた、夏紀先輩が本番で吹けなくなるということを意味しているんですよね。そういった「犠牲」をすべて受け入れて、それでもなお「後悔」しない選択をしたいと、はっきり宣言することができたからこそ、ああ久美子は変わったんだなあと我々は強く実感できるわけですね。

小笠原晴香さんについて

以前記事でも書きましたが、まあとにかく晴香部長が可愛いんですよ。葵が退部して泣く、葉月たちが選抜メンバーのために演奏してくれた時も泣く、コンクールの後でも泣く、部の送別会でも泣く、とにかく泣き虫で、早見さんの泣き演技も素晴らしいんだ。

でも、こういう頼りなさそうな姿も良いんですが、慣れない仕事を任せられて頑張ってる姿もまた魅力的であります。あすかや麗奈は、どちらかと言うと天才型の人間であり、自分をあるがままに表現できれば十分に称賛されるだけの力がある人間であり、それを実行するために他人とぶつかることを恐れない人間なのです。でも、小笠原さんは、人前に出るのも緊張してしまうし、リーダー的な仕事もお世辞にも得意とは言えない、それでもなお皆のために一生懸命がんばってる姿、それが本当に尊いです。他の登場人物が自分のエゴを通そうとして他人とぶつかっていく中でも、部長だけは終始「皆のため」に行動していたように思うんですよね。

おそらく彼女は努力型の人間と言えるんじゃないでしょうか。駅ビルコンサートのソロだってきっと、緊張しても大丈夫なように、ものすごい努力をしてるんだと思う。部長の仕事だって、あすかに頼りっぱなしの自分を変えようと必死に努力して、当然つらいこともいっぱい経験したでしょう。それがあったからからこその、あの全国大会の後の大泣きなんだと思うと、本当にもう感動で胸が詰まりそうになりますよね。

あすか先輩の家庭問題

以前の記事でも述べた通り、作品で描かれているのは、個人のエゴとエゴとのぶつかり合いと言っても過言ではないわけです。例えば、テキトーに部活やる組と、全国を目指して頑張る組との対立。ソロパートは3年生が吹くべきだという主張と、最も実力のある者が吹くべきだという主張との対立。

なかでも第2期は、部活よりも将来のことを考えて勉強してほしいという親の論理と、後悔にしないように今の部活を頑張りたいという子の論理とのぶつかり合いが描かれていました。特に、あすかの場合、母親が異様なまでにヒステリックで、何としてでも部活をやめさせようと学校まで押しかけてくる人物として描かれていました。

ところが、これは原作を読んだ時も思ったのですが、久美子の説得によってあすかが部活に戻ると、母親の件はまるで何もなかったかのようになり、母親がその後登場することもなくて、「え~、あすか先輩の件はこれで終わりかよ~」と思いました。あすかが部に復帰しようと思い直したのは久美子のおかげではありますが、実際に戻ってこれるようになったのは、模試で良い成績をとって母親を説得したからという部分が大きいわけです。実際に、母親とあすかの問題が根本的に解決したわけではなく、作品でもそこに深く立ち入ろうとはしないんですよね。

だから作品の構成として「正直どうなのかなあ」と思う気持ちはあります。ちょっとだけでも母親が再登場してきて、これからあすかと新しい関係を築いていけるような描写があれば良かったのですが…。でも、家庭の問題が最後まで曖昧なままで終わり、久美子も他の誰も部活動から外れた問題については結局踏み込んでいけないという感じは、現実の部活動を見ても分かる通りすごくリアリティはあると思います。

みぞれと希美

みぞれと希美との関係の描き方もまた、あすかと母親の話と動揺の問題を抱えています。これについては以前の記事で嫌というほど述べているのですが、簡単に言うと、「努力は本当に報われるか」という作品のテーマと、「あすかは何故希美の復帰を認めないのか」という主軸となるストーリーとが上手く一致していないという問題です。散々話を引っ張っておいて、結局、みぞれさんが希美のこと大好きすぎて色々ややこしいことになってただけという。

でも、そういう欠点を補って余りあるほどに、みぞれと希美の関係性が魅力的に描かれていました。その描き方についても、原作とアニメでは大きく異なっていて、それぞれ別の良さがあるということは、第4話の感想記事で書いた通り。

その後も、文化祭で客より優先して希美にケーキを渡そうとするみぞれなど、イチャラブっぷりを見せつけていましたが、何といっても圧巻なのが、全国大会へ向かう途中のバスで2人が向き合うシーン。わずか数十秒のシーンですが、第1話の中学時代のバスのシーンともオーバーラップして、これまで2人の辿ってきた道がすべてこのシーンに集約しているようで、個人的に2期で一番好きなシーンでした。

みぞれさん、希美さん、これからも末永くお幸せに。

その他の登場人物

あすか先輩が部に戻ってきたときにメッチャ泣いてる梨子先輩かわいい。集合写真でもちゃっかり後藤の近くにいる梨子先輩かわいい。部一番のラブラブカップルとしてこれからも夏紀や久美子を支えていってほしいですね。

麗奈と優子に関しては、久美子の場合とは逆の成長を遂げたように思います。例えば優子は、第1期では「ソロは香織が吹くべき」という自分の主張を執拗に叫んでいるだけですが、第2期ではまだ納得してないと言いつつも、自分の主張を抑えて「全国を目指すためには麗奈が吹くのが正しい」と認めるようになっていきました。麗奈も、最初は周りに弱さを見せずに一人で突き進んでいくだけだったのが、次第に自分の弱さを認めるようになり、久美子以外の人とも良い関係を築きつつあるように思います。

久美子が自分の意志を通そうとするとき、いつも割を食っていたのが、我らが夏紀先輩でした。まあ、これは第1期でも変わらないんですけどね。窓際で寝ていた夏紀に声をかけて練習に戻したのも久美子だし、夏紀がオーディションで負けたのも久美子でした。そして第2期でも、「あすか先輩が戻ってきたら夏紀先輩が全国出れなくなるやんうわあああああ」的な葛藤を乗り越えて「それでも私はあすか先輩に戻ってきてほしい」と宣言するのは久美子なのです。それでも、不平不満を一切言わずに久美子やあすかのために自分が犠牲になる夏紀先輩、これはもう天使という他ないですね。

話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選

毎年恒例のアニメ話数単位10選です。例年通り、こちらの記事を参考に、

・2016年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

というルールで、今年最も印象深かった10話を選びました。

ハイスクール・フリート』、第10話、「赤道祭でハッピー!」

  • 脚本:吉田玲子
  • 絵コンテ:藤森カズマ
  • 演出:たかたまさひろ
  • 作画監督:古矢好二、丸岡功治、植竹康彦、大西秀明、江間一隆、福地和浩、成松義人、相澤秀亮、王國年
  • 総作画監督:中村直人、奥田陽介、山田有慶

赤道祭やろうと言い出したのに周りが全然盛り上がってなくて拗ねるマロンちゃんかわいい。航海科による後悔ラップは「寒すぎて凍える」「恥ずかしくて見ていられない」など散々な評判だったが、バカ野郎!テレビを直視できないほど寒くて痛々しくて恥ずかしいからこそ逆に良いんじゃねえか!と言いたい。

僕だけがいない街』、第8話、「螺旋」

  • 脚本:安永豊
  • 絵コンテ:こさや
  • 演出:こさや
  • 作画監督:古住千秋

これはアニメだけに限らず、最近の映像作品は分かりやすさを求めるあまり、回想・台詞・その他の演出などが説明過多になってしまうケースが多いように感じる。そんな中でも『僕だけがいない街』は、必要最小限の情報で物語を進めて行く演出の力が際立っていたと思う。特に第8話はそれが顕著だった。
関連記事:『僕だけがいない街』総評 - 新・怖いくらいに青い空

響け! ユーフォニアム2』、第4話、「めざめるオーボエ

みぞれ先輩が最高。下の関連記事でも書いたように、決して目新しいというわけではないがグッとくる表現技法によって、原作屈指の名シーンを見事に再構成していた。第1話や第10話も良かったけど、あえて一つに絞るならやっぱり第4話かなあ。
関連記事:『響け! ユーフォニアム2』第4話と原作小説との比較 - 新・怖いくらいに青い空

この素晴らしい世界に祝福を!』、第3話、「この右手にお宝(ぱんつ)を!」

久々にアニメ見てテレビの前で笑い転げた。スティール魔法でパンツを奪うくだりは、見る前から結果が予想できるけれども笑える。アニメ第2期も早く見たい。

この美術部には問題がある!』、第6話、「気になる美少女転校生」

内巻君が宇佐美さんを肩車するシーンのリアルな質感というか肉感が凄い。恐る恐る太腿を肩に乗せていく感じとか、立ち上がった時の身体の揺れとかがリアルで、TV画面から体温や匂いまで伝わってくるようでした。

ストライクウィッチーズO.V.A.』、Vol.1、「サン・トロンの雷鳴」

『ブレイブウィッチーズ』第4話の放送延期に伴い代替放送された『ストライクウィッチーズOVAの中の1話。この企画の趣旨に合ってるかは分かりませんが、一応今年がTV初放送なので選出しました。とにかく、エーリカマジ天使としか言いようがない素晴らしさ。トゥルーデを心配するあまり妹ウルスラにきつく当たってしまうエーリカがもう…。特に、ウルスラが開発したジェット機にイチャモンつけて、「ジェットとはそういうものなのです」と言い返された後、「なんだよ!そういうものって!」とマジなトーンで声を荒げるエーリカが本当に尊い…。

3月のライオン』、第10話、「Chapter.20 贈られたもの①」「Chapter.21 贈られたもの②」

  • 脚本:木澤行人
  • 絵コンテ:黒沢守
  • 演出:宮本幸裕
  • 作画監督:よこたたくみ、野道佳代、藤本真由、杉藤さゆり、西澤真也
  • 総作画監督:杉山延寛、潮月一也

昨日見たばかりの第10話。前話の感動的な対局とは大違いだ。笑っちゃうくらい胸糞悪い。でも、これこそが『3月のライオン』という作品の真髄なのだ。見終わった後に心の中に残る、なんとも言えないモヤっとした感じ。おそらく作者自身もまた、他人の何気ない一言とか、小さな悪意とか、エゴイズムとかのせいで、何度も理不尽に傷付けられてきたんじゃないだろうか(Twitterとかの発言を見てるとそう感じる)。そうでなければ、こんな繊細な物語は描けないだろう。

91Days』、第11話、「すべてがむだごと」

  • 脚本:岸本卓
  • 絵コンテ:小島正幸
  • 演出:鈴木孝聡、平向智子
  • 作画監督:西川絵奈、北山修一、川添政和、大島貞生、岸友洋

ファミリーを守ろうと戦ってきたヴィンセントやネロの人生が、まさに一晩で全て「むだごと」になってしまう衝撃。ああもうメチャクチャだよ!と叫びたくなる。見終わった後に残るのは言いようのない虚しさだが、あまりにも虚しすぎると人は逆にカタルシスすら感じるのだ。

NEW GAME!』、第4話、「初めてのお給料…!」

八神さんの「青葉が楽しそうな顔してるうちは大丈夫。ゲームがつまらなかったらあんな顔しない」という台詞が凄く印象に残っている。「自分達の作ったものがちゃんと売れるか?」みたいな現実的な心配をするのは、ある程度キャリアを積んだ人の仕事で、入社して日が浅いうちはただ無我夢中で楽しみながらスキルを身につければそれでいい、という作中の仕事観みたいなものがよく表れてる台詞だと思うのだ。

Re:ゼロから始める異世界生活』、第13話、「自称騎士ナツキ・スバル」

  • 脚本:横谷昌宏
  • 絵コンテ:長山延好
  • 演出:古賀一臣
  • 作画監督:中田正彦、渡邉八惠子、浅利歩惟、池上太郎

演出や作画や声優の演技が全て「本気」だった。スバルという主人公の痛々しさと見苦しさを表現するためだけに、全ての力を注ぎ込んで作られている。こんな回は今後二度と見ることができないだろう。

『響け! ユーフォニアム』の作品構造

アニメ第10話まで見てようやく、『響け! ユーフォニアム』の作品構造が自分の中で分かったので、備忘録としてここに載せておきます。

  1. 作中で描かれているのは、個人のエゴとエゴとのぶつかり合い。例えば、テキトーに部活やる組と、全国を目指して頑張る組との対立。ソロパートは3年生が吹くべきだという主張と、最も実力のある者が吹くべきだという主張との対立。部活を頑張りたい子と、部活よりも将来のことを考えて勉強してほしい親との対立。
  2. 作中において自分のエゴを通そうとしなかった者は、必ず「後悔」する。例えば、親に言われるがまま吹奏楽を辞め大学に進んだ麻美子さん。ただ周りに流されるままで本気になれずにいた中学時代の久美子。
  3. 作中において自分のエゴを通すと、同時に、それによって生じる重い「責任」も背負うことになる。例えば、オーディションでの麗奈の勝利は、香織の敗北を意味する。全国大会にあすかが出場するということは、夏紀が全国大会に出られないということを意味する。
  4. 作中における成長とは、自分のエゴを通そうとするだけだった者が、相手のエゴを受け入れるようになること。あるいは、周囲に流されて自分のエゴを通そうとしてこなかった者が、自分のエゴを通せるようになること。前者の代表例が優子(第1巻ではソロは香織が吹くべきと執拗に叫んでいるが、第2巻ではまだ納得してないと言いつつも全国を目指すためには麗奈が吹くのが正しいと認めるようになる)。後者の代表例が久美子(これまでずっと傍観者的なポジションだったのが、第3巻でようやく、あすかや他の部員の気持ちを度外視して、ただ単純にあすかに戻ってきてほしいという自分の気持ちを伝えられるようになる)。

このように考えれば、この作品は実は、かなり明瞭でシンプルな構造をしているんだということが分かると思います。