新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

『響け! ユーフォニアム』の作品構造

アニメ第10話まで見てようやく、『響け! ユーフォニアム』の作品構造が自分の中で分かったので、備忘録としてここに載せておきます。

  1. 作中で描かれているのは、個人のエゴとエゴとのぶつかり合い。例えば、テキトーに部活やる組と、全国を目指して頑張る組との対立。ソロパートは3年生が吹くべきだという主張と、最も実力のある者が吹くべきだという主張との対立。部活を頑張りたい子と、部活よりも将来のことを考えて勉強してほしい親との対立。
  2. 作中において自分のエゴを通そうとしなかった者は、必ず「後悔」する。例えば、親に言われるがまま吹奏楽を辞め大学に進んだ麻美子さん。ただ周りに流されるままで本気になれずにいた中学時代の久美子。
  3. 作中において自分のエゴを通すと、同時に、それによって生じる重い「責任」も背負うことになる。例えば、オーディションでの麗奈の勝利は、香織の敗北を意味する。全国大会にあすかが出場するということは、夏紀が全国大会に出られないということを意味する。
  4. 作中における成長とは、自分のエゴを通そうとするだけだった者が、相手のエゴを受け入れるようになること。あるいは、周囲に流されて自分のエゴを通そうとしてこなかった者が、自分のエゴを通せるようになること。前者の代表例が優子(第1巻ではソロは香織が吹くべきと執拗に叫んでいるが、第2巻ではまだ納得してないと言いつつも全国を目指すためには麗奈が吹くのが正しいと認めるようになる)。後者の代表例が久美子(これまでずっと傍観者的なポジションだったのが、第3巻でようやく、あすかや他の部員の気持ちを度外視して、ただ単純にあすかに戻ってきてほしいという自分の気持ちを伝えられるようになる)。

このように考えれば、この作品は実は、かなり明瞭でシンプルな構造をしているんだということが分かると思います。

このブログの中で一番長い記事

2010年にこのブログを始めて以来いろんな記事を書いてきましたが、自分が書いた記事の中で一番長い記事って何だろう、と何となく気になったので調べてみました。私の記事の中でも特に長いであろうと思われる記事をいくつかピックアップして、編集画面を開いてみました。すると下の方に文字数が表示されるので、それを利用して文字数のランキングを付けてみました。

もっとも、ここで表示される文字数は、必ずしも記事内の文字数を正確に反映するものではないのですが*1、私のブログの場合、ほとんど文字によって構成され、写真や特殊文字などはあまり使ってないので、実際の文字数と非常に近しい値が表示されていると考えて差し支えないと思います。

で、調べた結果、文字数が10000字を超えた記事が全部で6個あることが分かったので、それをランキング方式で発表していきますね。

まずは第6位から。

第6位 10895字

『ココロコネクト』第1話考察

アニメ版『ココロコネクト』の第1話の考察記事。今から考えると、たった1話分の内容でよくこんなに長い考察書けたな、と思います。ちなみに、第7位*2と第8位*3の記事も、アニメ『ココロコネクト』関連の記事なんですけどね(笑)。ご存知の通り私は『ココロコネクト』の稲葉姫子さんが大好きで、それがアニメ化されるということでとにかく気合い入れて毎週記事をupしてましたね。

第5位 10970字

『ココロコネクト』の思想1―「悩み」を解決するためのヒント

って、おい! また『ココロコネクト』かよ! これはアニメ版ではなく、原作小説の第1巻から第3巻までの考察です。〈ふうせんかずら〉について解説するために、『WORKING!!』やらカント哲学やらを持ち出して、長々と書き綴っているので、なかなかカオスなことになっています。

第4位 11412字

『響け! ユーフォニアム』の2年生組の関係性が尊すぎて生きるのがつらい!

最初は原作小説第2巻のテーマについて真面目に書いていったのですが、途中から、いかに2年生組の関係性が素晴らしいかについて延々と語り尽くすだけの記事になってました。アニメの2期が始まってから、結構いろんな方に読んでいただいているようで、Twitterでも「10,000字のユーフォの感想書いた上に自作濃厚相関図作成までしてる」*4なんて笑われたりしてます。

第3位 12856字

『これからの正義の話をしよっ☆』を読んで、これからのバレンタインデーの話をしよう

おお…。ラノベ1冊分でこの文字数! この小説だけでなく、本家の『これからの「正義」の話をしよう』に出てくる功利主義リバタリアニズム・無知のベール・リベラリズム共同体主義といった用語についても詳しい説明を入れてるので、これほど長大な記事になってるのでしょう。

第2位 13875字

細かすぎて伝わらない『陽炎、抜錨します!』(第4~6巻)の萌え(燃え)ポイント

すごい…。こんな長くなるんなら、1巻ごとに分けて記事にした方が良かったなあ。ちなみに、『陽炎抜錨』は全7巻あるのですが、第1巻から第3巻までの記事が7325字*5、第7巻の記事が5850字*6で、全部足し合わせると2万7千字超という凄い長さになっています。まあ、それだけ、語るべき萌えポイントが多い超名作だったということなんですよね。

さあ、いよいよ、栄えある第1位は…

……

第1位 14321字

『ココロコネクト』の思想2―「世界を変える」ということ、「仲間を信頼する」ということ

はい、出た~! またココロコネクト! これは原作小説の第4巻から第6巻までの考察です。『ココロコネクト』の考察のはずなのに、唐突に『俺妹』や『Angel Beats!』や『けいおん!』の話が挿入されるなど、なかなかにカオスな内容となってますねえ。

ちなみに、当ブログでは全部で22個の『ココロコネクト』関連記事を書いているのですが、それらの文字数を合計すると、なんと、13万字超! とてつもないことになっています。それくらいに、私にとって思い入れのある大好きな作品だということです。

こうして見てみますと、上位5つの記事が全てライトノベルや小説に関する記事となっているのが面白いですね。やはり、漫画やアニメに比べて作品に含まれる情報量が多く、そのぶん考察する内容も多くなるのかもしれません。

以上。

どん子ちゃん(博多弁女子)と八十亀ちゃん(名古屋弁女子)はどっちが可愛いか?

八十亀ちゃんかんさつにっき: 1 (REXコミックス)

八十亀ちゃんかんさつにっき: 1 (REXコミックス)

答え: どっちもバリかわいい!

どうしてこの2人はこんなにも萌えるのか? 私が思うに、これらの作品の萌えポイントは3つあります。

萌えポイント1 方言抜きでも十分かわいい

まず、どちらの作品も、キャラクター単体で十分に可愛くて萌える、という大前提があるんですよね。

『八十亀ちゃんかんさつにっき』の八十亀ちゃんの場合、表紙を見てもらえば分かるとおり、外見・言動がすべて猫っぽくて、普段はメッチャ気性が荒いのですが、方言をからかわれたりしたらすぐ顔真っ赤になったり涙目になったりと、とにかく目まぐるしく表情が変わるのが素晴らしいですね。

『博多弁の女の子はかわいいと思いませんか?』のどん子ちゃんも、表紙にあるとおり、見てるこっちが気持ちよくなれるような笑顔が実に良いですし、東京で豚骨ラーメンが食べれなくて泣いたり、ドヤ顔で博多弁の解説をしてきたりと、言動がもういちいち可愛くて仕方がない。

もちろん、私以外にもいろんな方がすでに同様の指摘をされています。

関連記事:『博多弁の女の子はかわいいと思いませんか?』、バリかわいいと思います! | ヤマカム
関連記事:【漫画】安藤正基先生『八十亀ちゃんかんさつにっき』(第1巻)初回特典・感想 名古屋への偏見を深めよう(違 | LH MAGAZINE

萌えポイント2 方言が入ることでかわいさが倍増している

以上のような感じで方言なしでもかわいいキャラなのですが、そこに方言が入ることでかわいさが何倍にも増幅されているのです。しかも、作者自身が福岡出身、名古屋出身ということで、地元民だからこそ分かる萌えるセリフ回しがちゃんと描かれているんですよね。私は小学生から高校まで福岡にいたので、名古屋弁についてはよく分からないのですが、どん子ちゃんの博多弁の方は、実に自然で、なおかつ、可愛らしい台詞をじゃんじゃん入れてきていて、それだけでもう大満足という出来になってます。

例えば、女子高生が夏バテになって「超暑いんですけど…」と言ってるのを博多弁に直せ、というお題があったとしましょう。

こういう場合に、博多弁に詳しくない「ニワカ」の人達は、「めっちゃ熱いばい…」みたいな変な博多弁を作ってきます(※これはあくまでもイメージです)。

博多弁警察だ! どうせ語尾に何でもかんでも「ばい」を付ければいいとか思っとるんやろ!*1 あと、「めっちゃ」は大阪弁たい!*2 このニワカが! にわかせんぺいば持ってはよ断りば言うてきんしゃい!

一方、本作の方はどうなってるかと言うと、どん子ちゃんが「ばり暑いちゃけど…」(第13話)と言ってます。うん、実に正しい博多弁だ! 「超」や「メッチャ」じゃなくて「ばり」を使うことで、ちゃんと自然な博多弁になっていますし、萌え度も上がっています。そして語尾も、「ばい」とか「と」じゃなくて、「ちゃけど」になってるのが、ばり可愛いんですよ! この違い、皆さんお分かりいただけますか?

萌えポイント3 溢れ出る郷土愛がかわいい

方言の可愛さに加えて、こういう作品の醍醐味と言えばやはり、地元あるあるネタですよね。

私も所用で何度か名古屋に行った事があるんですが、メーエキ(名古屋駅の通称)の近くにある巨大マネキンを見かけて「何だこれは?」って思った記憶があるのですが、『八十亀ちゃんかんさつにっき』を読むことで謎が解けました。

あと、登場人物の一人が「名古屋に観光地はありません」って言うシーンがあるのですが、なんというか、これは福岡でも同じような問題を抱えていまして*3、妙に親近感を覚えましたね。

福岡の方でも、ゴミ出しが夜とか、袋入りのかき氷とか、豚骨ラーメンに対する異様なこだわりとか、地元あるあるネタが満載になっております。例えば、コンビニで肉まんを買ったら酢醤油が付いてくるとか、私もつい最近まで当たり前と思っていたんですけどね。どうも九州以外では付いてこないらしいです。

こういう地元あるあるをドヤ顔で披露しつつ、地元民ならではの変なプライドとかこだわりとかも垣間見えて、それがもう可愛いんですよね。

というわけで、最初は軽い気持ちで読んでみたこの2作ですが、かわいい女の子がかわいい方言で地元あるあるを語るという、実に素敵な内容となっていますので、すごくオススメです。

*1:個人的に「~ばい」は標準語でいうところの「~だぞ」と同じような使い方なので、この場面で使うのはちょっと不自然に感じる。「今年はなんでこげん暑かと?もう10月ばい!」みたいな使い方なら自然で良い。

*2:「めっちゃ」を一切使わないということはないが、博多弁に訳すんなら「ばり」か「ちかっぱ」が正解。しかし「ちかっぱ」はあまり使用頻度が高くないので、やはり「ばり」が最適だろう。

*3:例えば、熊本だったら熊本城&阿蘇くまモン、長崎だったら眼鏡橋&中華街&夜景、みたいな感じで地元を代表する観光地があるわけですが、福岡の場合、パッと思いつかないのが悲しいのですよ。太宰府天満宮福岡ドームキャナルシティ?どれも観光地としては微妙だなあ…。

『アニバタ Vol.16 特集 聲の形』に寄稿しました

コミックマーケット91にあわせて発行される『アニバタ Vol.16 特集 聲の形』に寄稿しましたので、お知らせいたします。

アニバタ Vol.16 [特集]聲の形 | アニメ・マンガ評論刊行会

アニバタとは、たつざわさんが代表をされているアニメ・マンガ評論刊行会が発行する評論誌で、私は今回初めて寄稿させていただきました。

私が書いたのは、「第1部 キャラクター論」の中にある「『正義振りかざし野郎』としての真柴智 原作漫画と映画との比較」という文章で、真柴智というキャラクターの位置付けと、それが原作と映画とでどう違っているのか、について述べたものです。

まあ、結絃きゅんが可愛すぎて生きるのが辛い!みたいなことばっかつぶやいてる自分が何書いてんだって話なんですが、私以外にも多くの方が大変クオリティの高い評論を書かれているようなので、興味のある方は是非ご一読よろしくお願いします。

『終末のイゼッタ』のエイルシュタット公国

『終末のイゼッタ』のエイルシュタット公国って、まさに、自民党日本会議を支持してるような層が理想とする国家だよな。

長い歴史と伝統を持ち全国民から敬愛される大公家がいて、愛国心が強くて一致団結している国民がいて、いざとなったら命を賭けて戦う士気の高い軍隊がいて、したたかに戦略を練って大国とも交渉できる参謀がいて。

そこには、移民問題もなければ、王室撤廃を叫ぶ勢力もいなくて、豊かな土地と優れた産業技術があって、国民は何一つ政府に不満を言わずに、まるで一つの家族のように仲良く暮らしてるんだろう。

ネット上では「バッドエンドまっしぐらじゃね?」みたいな声が大きいけど、作り手の願望がここまでだだ漏れなアニメも珍しいので、たぶんハッピーエンドになるんじゃないかなあ。

誤解されないように言っておくと、作品自体は凄く良いと思いますよ。ミリタリー関連の描写は実に見ごたえがあって、特に、銃・戦闘機・戦車の作画は凄くカッコいいです。敵の側のキャラクターも、いろいろな思惑や野心によって動いているので、ストーリーに重厚感があって尻上がりに良くなっていってます。イゼッタとフィーネ様の関係性もまた素晴らしいものがありますし、キャラデザも「さすがBUNBUNだ」という感じで大好きです。

まあ、BUNBUNの絵でミリタリーものをやるんなら、さっさと『ニーナとうさぎと魔法の戦車』をアニメ化しろ、って少し思うけど。