新・怖いくらいに青い空

アニメ・マンガ・ライトノベル考察

日本の新幹線が海外で売れない理由

新幹線で設定されているカーブが小さすぎて高速走行ができない
→高速走行の実績がない ⇒売れない*1

新幹線で設定されているカーブが小さすぎて高速走行ができない
→それでも何とか高速走行しようとして車体を軽量化する
→事故や脱線のリスクが大きい ⇒売れない*2

日本に鉄道を敷く時に狭軌を選んでしまった
狭軌では高速走行が難しいため新幹線を作る時に標準軌を採用した
→在来線に乗り入れできない仕様になっている ⇒売れない*3

日本に鉄道を敷く時に狭軌を選んでしまった
狭軌では高速走行が難しいため新幹線を作る時に標準軌を採用した
→在来線に乗り入れできない仕様になっている
→新幹線を通す時に都市部も含めて全部一から作らないといけない
→コストが高くつく ⇒売れない*4

日本に鉄道を敷く時に狭軌を選んでしまった
狭軌では高速走行が難しいため新幹線を作る時に標準軌を採用した
→在来線に乗り入れできない仕様になっている
→どうせ在来線は通らないからといって車幅を広げて乗客数を増やした
→上下線の車間が狭くなる
→風圧やバランスの影響で高速走行できない ⇒売れない*5

参考文献:〈図解〉日本vs.ヨーロッパ「新幹線」戦争 (講談社+α文庫)

日本の技術が世界一だと信じて疑わない日本人には受け入れがたいことかもしれないが、これが現実。

たとえどんなに技術を磨いても、最初のコンセプトを間違えると売れなくなる、という教科書のような見本。

*1:東海道新幹線は最小半径2500mで設計されており、それによってN700系でも最高270kmまでしか出せない。山陽新幹線東北新幹線では最小半径4000mに変更されたが、それでも最高速度はE5系の320km。一方、欧州の新幹線では最小半径6000mとかが普通で、350kmで走行している例も。

*2:線路に人や車が親ほとんど侵入することのない日本の新幹線ならそれでもいいが、欧米の新幹線は在来線に乗り入れるのが一般的であるため、脱線のリスクが高い日本の車両は採用しにくい。

*3:欧米は在来線も標準軌であり、日本の山形新幹線秋田新幹線のような新幹線が在来線に乗り入れるスタイルが当たり前。

*4:在来線に乗り入れる方式なら、用地買収が困難な都市部や採算が合わない地域は在来線線路を活用し、それ以外の場所だけ新幹線線路を建設する、というような柔軟な建設方法が採用できる。都市部はどうしてもカーブが多くなり騒音問題もあるため、そもそも高速走行できないのに、日本の方式ではわざわざ莫大な費用をかけて都心に新線を建設するしかないのでコスト高になる。

*5:上で述べたように、在来線乗り入れ方式が一般的な欧米では車幅も在来線と新幹線で一緒。車幅を広げるとますます高速走行に不利になる。

話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選

今年もこの季節がやってきました。例年通り、ブログ新米小僧の見習日記に則り、

・2019年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

というルールで今年観たベスト10話を選出します。

後ほど、2010年代(2010年~2019年)全体の話数単位10話も発表いたしますので、よろしくお願いします。

かぐや様は告らせたい』、第12話、「花火の音は聞こえない 後編」「かぐや様は避けたくない」

  • 脚本:菅原雪絵
  • 絵コンテ:畠山守
  • 演出:菊池貴行、畠山守
  • 作画監督:石崎夏海、川﨑玲奈、ぐんそう、佐藤好、石川洋一、針場裕子、Park Ae-Lee、Shim Min-hyeon
  • 総作画監督:八尋裕子

原作ファンがずっと心待ちにしていた花火回を、期待を裏切らずハイクオリティで仕上げてくれたアニメスタッフに感謝したい。以下、アニメ『かぐや様は告らせたい』感想記事より再掲。

ルイ・パスツールはこう言った。「幸運は準備された心に宿る」

この世に神様など居ない。奇跡も魔法も存在しない。だが、それでも、たった一人の人間が、かぐやの事を思い、もっとかぐやの事を知りたいと願い、そのために必死に努力して、準備を続けた時、今までの不幸なんてきれいさっぱり忘れてしまうくらいに最高の幸運が訪れる。そこには夏らしいロマンチックな思い出も、特別な舞台装置も必要ない。花火ですら必要ない。大好きな人と一緒に夏を過ごす、ただそれだけの事で、かぐやは救われていたのだから。

かぐや様は告らせたい』は、ラブコメでも恋愛頭脳戦でもない。これは、四宮かぐやという少女の心の救済の物語。そして、かぐやだけでなく、石上やその他の登場人物みんなが、誰かから救われ、誰かを救う物語だ。

『さらざんまい』、第11話、「つながりたいから、さらざんまい」

作品のテーマが凝縮した見事な最終話。『さらざんまい』は繋がりに満ち溢れたこの世界を美しいものとして描いているわけではない。その世界は、醜く、怖ろしく、苦しみに満ちている。それでも人は、繋がりの外では生きていてない、繋がりの外に行ってしまった人を救う事はできない、ということを描いている。スマホが普及し、ありとあらゆる人と物がつながった現代だからこそ光るテーマ。

『荒ぶる季節の乙女どもよ。』、第10話、「穴」

『荒ぶる季節の乙女どもよ。』が最高に笑えるのは、登場人物たちの言動がみんな痛々しいからである。大人から見ればどうでもいいような事にいちいち一喜一憂し、赤面し、慌てふためくその姿が、最高に面白い。でもそれは、彼女たちが真剣に思い悩み、どこまでも必死であったことの裏返しでもある。大好きなミロ先生を振り向かせようと策を練るも全て上手くいかず、嫉妬や劣等感やあらゆる感情が溢れ出してきて泣き出してしまう本郷ひと葉。痛々しさが一周回って感動へと昇華していく神回。

『グランベルム』、第7話、「ミス・ルサンチマン

まあ、見事としか言いようがない。そこには、普通のアニメでありがちな、ハートフルで穏やかなエンディングなど一片たりとも存在しない。アンナは、最後の最後まで改心などすることなく、新月を恨み、妬み、嫉妬と憎悪に身を焦がしたまま消えていく。以下、『グランベルム』第7話感想記事より引用。

この話を振り返る時、私は、どうすればアンナは救われたのだろうと考える。

確かに、アンナの置かれた境遇には同情できる余地がたくさんある。すぐそばに圧倒的な才能を持った新月がいて、新月ばかりが周りから期待され、嫉妬で気がおかしくなってしまうのも分かる。それでも、アンナの周りの人達はアンナを救おうとしていた。その人達から差し伸べられた手を振りほどき、闇に堕ちていったのは、他ならぬアンナ自身の意思だ。

人は、不幸な状況に陥ったとしても、誰かしらが救いの手を差し伸べてくれる。けれども、その手を振り払ってしまったら、もう誰もその人を救えない。そういう人を救うことはとても難しい。(中略)

我々の社会は、こういう人達を救うことができない。『グランベルム』という作品は、このどうしようもない現実を我々に突きつけてくる。

『女子高生の無駄づかい』、第7話、「やまい

もう始まる前から神回確定のヤマイのメイン回である。ヤバい恰好で所沢をうろついているのを筆頭に、予想を軽々と超えていくヤマイの痛々しさと、それに呆れつつも優しく接してくれるクラスメイトや大人の存在、もう全てが最高である。ギャグアニメとしての言葉のチョイスも素晴らしくて、例えば、「頑張るんだよ!座敷わらしの子!」「汚れたビーチの詰め合わせ」「日照権で地元とモメて建設予定がずれ込んだ」、よくもまあ、こんな神ワードを次々思いつくものである(観てない人にとってはさっぱり分からないだろうが)。

『八十亀ちゃんかんさつにっき』、第6話、「スガキヤいこみゃあ」

名古屋と言えば決して外すことのできないスガキヤ回。普段はバリバリの名古屋弁なのにメールでは標準語な八十亀ちゃんなど、名古屋あるあるネタに留まらない味わい深さが出てきていて、しかもそれを上手く5分アニメの中にまとめていく手法はグッとくるものがある。

からかい上手の高木さん2』、第11話、「歩数」「花火」「お土産」「約束」

いつも西片に対して本心を見せない高木さんが、珍しく声を弾ませて「これも!」「これも!」とか言いながら缶ジュースを渡していく場面はいつ見ても惚れ惚れする美しさ。二人の関係が変わっていないようで少しずつ変わっていってるという事がよく分かる。

『ノー・ガンズ・ライフ』、第1話、「暴走拡張者」

原作も読んでないし事前情報もほとんど知らない状態で見た第1話だったが、完全に引き込まれた。頭が丸ごと銃に改造されたシュールな光景と、ハードボイルドな世界観の融合。全体的に薄暗い画面に、銃の光沢が実に映える。

『星合の空』、第5話

眞己と母親が住む新居へ、父親が金をせびりにやってくる。薄暗い廊下。不気味に軋むドア。視聴者まで恐怖を覚えるような中井和哉の名演。部屋の奥から現れた柊真が札束を投げつけ、「これ以上眞己を苦しめるなら俺がお前を殺す」と迫る。

それはもちろんベストな選択ではない。第一、柊真のやり方では問題の根本的な解決にはならない。それでも、大人の持つ力や狡猾さを前にしてあまりにも無力な中学生が、必死に考え出した唯一の道。

父親が出て行ったあと、何度も「ありがとう」と言いながら柊真に抱きつく眞己。柊真の優しい声。服が擦れ合う音。夕日に照らされながら流れ落ちる雨。

二人の間にあるもの、それは、「愛」と呼ぶ他ない。かけがえのない大切な人を救いたい、その気持ちに性別など関係あるだろうか。美しい…。ただ、ただ、すべてが美しいとしか言いようのない神回。

『戦×恋』、第9話、「触る乙女と触られる乙女」

  • 脚本:兵頭一歩
  • 絵コンテ:西田正義
  • 演出:浅見松雄
  • 作画監督:Kwon Oh sik、Jeong Yeon soon、Ahn Hyo jeong、Lim Keun soo
  • 総作画監督:立石聖、小林利充

第9話までほとんど登場することなく秘密のベールに包まれていた早乙女家長女・一千花が、ようやく第9話にして本領発揮。その実態は、なんと、全身敏感肌のシスコンぽんこつキャラだった! このアニメに理屈や整合性は不要。ただただ、お風呂場で感じてしまった一千花姉様のあられもないお姿を堪能するのみ! 毎クールに最低1作はこういうアニメをやってほしいものだ。

2010年代TVアニメ各年ベスト

2010年代TVアニメ年別ベストという企画があったので、参加してみる。

すでにTwitterの方で述べたが、私が選んだ各年のベストは以下の通り。


と言っても、すでに各作品の感想や考察は本ブログで散々やってきたので、改めて詳しく語るのはやめておく。興味のある方は下記リンクに飛んでご確認ください。

『星合の空』の御杖さんが可愛すぎる件

『星合の空』。今期アニメの中ではダントツで素晴らしい。物語は、志城南中の男子ソフトテニス部の部長・新城柊真と、転校生・桂木眞己が再会するところから始まる。柊真の必死の勧誘もあり部に入部した眞己は、巧みな戦略によって部員達のやる気を引き出し、かつて弱小部と揶揄されていた彼らはどんどんレベルアップしていく。と同時に、部員達が抱える家庭の事情も浮き彫りになってきて…、という王道のスポーツアニメ。例えるなら、『響け!ユーフォニアム』の男子ソフトテニス版とでも言おうか。

だがしかし、そんな本作の最大の見どころは別のところにある。

第7話まで観てきた方々ならもうお気づきですよね。

そう。何故かソフトテニス部といつも行動を共にしている御杖夏南子さんの圧倒的可愛さこそが、『星合の空』最大の魅力と言っても過言ではないのです!

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御杖さんは眞己のクラスメイトで、髪はボサボサ、根暗でスクールカーストでは最下層にいるような女の子。自作イラストをSNSにupしてフォロワーの反応を見て楽しむのが趣味のオタク女子です。

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そんな彼女ですが何故か男子テニス部員達とは結構フランクに会話できていて、放課後はいつもグラウンドの隅で練習する姿を見ているんですが、その時の発言がもう色々ヤバい。

眞己が入部したのを見て「あんなカスの部活に入ってどうするつもりなんだ」(第2話)。

その直後、走り込みを始めた部員達を見て「バッカじゃないの? 走って爽やかソフトテニスかよ。アホらし。鳥肌」(第2話)。

再編し直したダブルスのペアに対して「余り者の2人じゃ見込みないんじゃない?」(第4話)。

マネージャーの飛鳥悠汰から「いつも眞己君のこと見てるね」と指摘されたら「アイツが転んで泣きっ面になるのを見たいんだよ」(第5話)。

もうね…。ホンマにもう…。コイツ性格ひねくれ過ぎだろ!

御杖さん、めちゃくちゃ口が悪いし、なんかもう色々こじらせ過ぎてて、一言でいえばヤベー奴なんですよ。

性格捻くれてるヒロイン、かわいいですよね~。最近で言えば、『はねバド!』の羽咲綾乃ちゃんとか、『SSSS.GRIDMAN』のアカネちゃんとか。御杖さんも彼女らに勝るとも劣らない捻くれ者なんですが、『星合の空』は男子の方もほぼ全員性格ひねくれてるんで、なんか、そういうところも『ユーフォ』に似ています。

とにかくこんな感じで部員の悪口ばっか言ってる捻くれ者の御杖さんなんですが、何故か知らないけど、コイツ、男子ソフト部のことメッチャ見てるんですわ!

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放課後、グラウンドの隅で一人ぽつんと座って、あるいは、飛鳥の隣らへんを陣取って、上に書いたような悪態付きながら、眞己達のことメッチャ見てるんですよ!

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そして、部活が終わったら部長や眞己達と一緒に下校。そのまましれっと眞己の家に上がり込んで、夕飯までご馳走になる始末。(しかも、柊真や飛鳥は手伝いとかしてくれてるのに、御杖さんだけは何もやらないwwwww)

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もうね…、本当にねえ…、君は一体何がしたいんだ?

極めつけが休日に強豪校と練習試合に行く回。前日は「私はそんなに暇じゃない」とか言ってたくせに、翌日部員達が相手校の校門前に着くとそこには…

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御杖さんいるしwwwwwwwwwwww

正直、アニメ見てる人も、作中の登場人物も、皆が皆「コイツ何やってんの?」って思ってるんですが、マジで理由が分かんないんですよ。

ほんと、部員でもマネージャーでもないくせに、コイツなんでいつもついてくるの? 眞己のことが好きなんか? あるいは、現時点で分かる断片的な情報からは、この子は教室や家で居場所がなくて、部員達と一緒にいるのが凄く居心地が良くてそこが唯一の居場所になってるのかなあとか推測されますが、そのあたりの事情は今後明かされていくのでしょう。

で、練習試合が始まって、志城南が想像以上に善戦して、その時の御杖さんの様子がさあ…

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メッチャ興奮してるやんwwwwwww

そして、試合が最も白熱してる時の御杖さんのカットがこちら。

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指の形wwwwwwwwwwwwwwww

いや、ホント最高だわ。以前は部員が努力してるのを冷めた目で見てた奴がさあ、試合が始まるとメッチャ興奮してガッツポーズとかしてるの! もう最高すぎるだろ、このアニメ。

そして、後日、息抜きのために多摩川河川敷でバーベキューをやることになったソフトテニス部の一同。

ええ、そうですよ。皆さんの予想通り。ここまで観てこられた方なら容易に次の展開が想像つくと思いますが、眞己たちが河川敷に行くとそこにはもちろん、

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また来たwwwwwwwwww

部員でもなんでもないくせに部のバーベキュー大会に当たり前のように参加する御杖さんwwwwwwwwww

もう、大っっっ好き………。何なの、この可愛い生き物?

この子が画面に出てきて何かしゃべるだけでもう大爆笑。

最終回に向けて、これからますます御杖さんから目が離せない日々が続きそうです。

エクセルのRAND関数で遊んでみた

【条件1】 普通のコイントス

エクセルのRAND関数は、0以上1未満の乱数を出力する関数である。エクセルのセルA2からA101に

=RAND()

と記入すると、下図のように0から1までの数値がランダムに表示される。

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次に、セルB2からB101に、

=IF(A2<0.5,1,0)

と入れる(A2のところには、A2~A101までのセル番号が入る)。これで、A列の値が0.5未満であれば1、0.5以上であれば0が表示される。

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そして、B列に出てきた1の総数を、セルC2に表示させる。

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これは要するに、100回コインを投げて何回表が出たかを記していることと等しい。

RAND関数の面白いところは、セルC2の値をコピペするたびに違う値が出てくるところだ。この図ではD列に値をコピーしていってる。

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では、この要領でC2の値を1万回コピーするとどうなるだろう。

………。

面倒くさいのでマクロを作って1万回コピペを繰り返した。

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この計算値1万個がどのような分布を示しているのか、グラフにしてみた。横軸が出力された数値、縦軸がその数値が出てきた回数を表している。

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これは要するに、「コイントス100回やって何回表が出るか確認」という操作を1万回繰り返して、出てきた数値の分布を見ていることと等しい。そして、この分布は予想通り、平均約50の正規分布となっていることが分かる。

【条件2】 スマホガチャモデル

今度は、ちょっと特殊なコインについて考える。セルB2からB101に、

=IF(A2<0.05,1,0)

と入力する。つまり、表が5%しか出ないコインである。これも同じように1万回繰り返してみた。

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図のようにピークがだいぶ左側に寄ったグラフになった。平均値はもちろん5で、表が10回以上出ることはほとんどない。一度も表が出ないパターンも62回あった。

これは、発生確率の少ない事象を何回も繰り返してるケースなので、スマホゲームのガチャで当たりを引く確率を示しているようなものである。

【条件3】 みんな平等モデル

では次に、もっと変なコインについて考えてみよう。まず、B列の上から1~5番目には、【条件1】と同じように、

=IF(A2<0.5,1,0)

を入れる。重要なのは6番目からで、

=IF(A7<(0.5-(AVERAGE(B$2:B6)-0.5)*0.8),1,0)

と入れる。何のこっちゃと思うかもしれないが、これは要するに、前回までに出た表の数によって表の出る確率が変動するようになっているのである。例えば、コイントス100回のうちn回目(nは6以上100以下の整数)のトスについて、

  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が0%ならば、n回目に表が出る確率は90%になる。
  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が50%ならば、n回目に表が出る確率も50%になる。
  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が100%ならば、n回目に表が出る確率は10%になる。

というような規則で、表が出る確率が10~90%の間で変動するように設定してある。例えば、1回目から20回目までに12回表が出たとすると、AVERAGE関数のところの値は0.6となり、21回目の確率は、

0.5-{(0.6-0.5)× 0.8 } = 0.42

で、42%となるのである。ここで0.8という数値は確率の変動幅を規定する定数で、私が勝手に決めただけなので、今はまだ気にしなくて良い。

この条件で1万回やった時のグラフは下のようになる。なお、表中のBnとは、n回目のコイントスで出てきた数値(表なら1、裏なら0)を表している。

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【条件1】と見比べてもらうと分かるが、とてもシャープなピークとなり、標準偏差も小さくなっていることが分かる。どうしてこんな事になるかというと、この【条件3】では、過去に表がいっぱい出ていれば表は出にくくなり、逆に、過去に表が少なかったならば表が出やすくなる。

要するに、みんな平等に計算値が50付近に収束するようになっているので、これは「みんな平等モデル」と命名しておこう。

【条件4】 格差拡大モデル

次は全く逆のパターンについて見てみよう。B列の6~100番目に入れる関数の符号を入れ替えて、

=IF(A7<(0.5+(AVERAGE(B$2:B6)-0.5)*0.8),1,0)

としてみる。この条件だと、

  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が0%ならば、n回目に表が出る確率は10%になる。
  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が50%ならば、n回目に表が出る確率も50%になる。
  • 1回からn-1回目までに表が出た確率が100%ならば、n回目に表が出る確率は90%になる。

という感じである。例えば、1回目から20回目までに12回表が出たとすると、21回目の確率は、

0.5+{(0.6-0.5)× 0.8 } = 0.58

さっきは0.5の右横の符号がマイナスだったのに対し、今回はプラスになっていることに注意。これだとどういうグラフができるのだろう。

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ご覧のとおり、ピークがめちゃくちゃブロードになった! グラフの縦軸が先ほどとは全然違うことに注意してほしい。また、標準偏差も【条件1】と比べて3倍以上も大きくなっている。

この条件では、過去に表の出た回数が多ければ多いほど、表が出る確率は大きくなり、逆に、表が出ていなかったら表が出る確率がどんどん小さくなる。要は、裕福な人ははますます裕福になり、貧乏人はますます貧乏になるというパターンであり、これによって計算値は大きくばらつくことになるのである。

【条件5A】 生まれ重視モデル(左右対称)

では次に、B列の6~100番目に入れる関数を、

=IF(A7<(0.5+(AVERAGE(B$2:B$6)-0.5)*0.8),1,0)

にしてみよう。先ほどの条件では「B6」となっていたところが「B$6」と変わっている。つまり、6~100番目の表が出る確率は全て、1回目から5回目までに何回表が出たかによって規定される。

  • 1~5回目で表0回ならば、6回目以降に表が出る確率は10%
  • 1~5回目で表1回ならば、6回目以降に表が出る確率は26%
  • 1~5回目で表2回ならば、6回目以降に表が出る確率は42%
  • 1~5回目で表3回ならば、6回目以降に表が出る確率は58%
  • 1~5回目で表4回ならば、6回目以降に表が出る確率は74%
  • 1~5回目で表5回ならば、6回目以降に表が出る確率は90%

要するにこれは、生まれた時に備わっている条件(親の年収、健康な体、才能、etc.)によって、その後の人生が全部決まってしまうようなケースを表しているので、これを「生まれ重視モデル」と命名しよう。では、1万回繰り返した後の計算値はどうなっているかというと、

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なんかピークが6つに分かれている!

これはよく考えてみれば当たり前で、表が出る確率は、1~5回目のコイントス結果によって6タイプに分類されている。そして、この6タイプの確率で6~100回目のコイントスが行われた結果、値は(a)10%、(b)26%、(c)42%、(d)58%、(e)74%、(f)90%を中心とする6山に寄って分布することとなるのである。

(もし、計算回数が1万回ではなく、2万、5万、10万回と増えていったら、もっと滑らかな6つのピークが確認できたであろう。しかし、今回は1万回でご容赦いただきたい。回数をこれ以上増やすと私のパソコンがフリーズしてしまうのである。)

上図では、1~5回目までのコイントス結果、つまり5つの因子がその後の人生を規定しているわけだが、この数を色々変えていったらどうなるだろう。生まれ重視モデルで因子の数を4、3、2、1と減らしていった場合の結果が下図である。条件名の右端にある枝番が因子数を示している。

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要は、初期の因子数がn個の時、n+1個のピークが出てくるわけである(化学の研究でNMRを使った事がある人には馴染み深いピーク形状であろう)。最も極端なのが【条件5A-1】である。これはつまり、最初のコイントスが表か裏か(セルB2の値が0か1か)によって、その後の人生がガラッと変わってしまうというケースである。

逆に、因子の数を7、10に増やしてみた。すると、下図のように、ピークどうしが重なり合って効果が相殺された結果、1まとまりのブロードなピークが出てくるという形状になった。

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【条件5B,5C,5D,5E】 生まれ重視モデル(非対称)

では今度は、上で見た【条件5A-4】をさらに変形してみよう。【条件5A-4】ではB列の1~4番目が、

=IF(A2<0.5,1,0)

となっていたが、これを、

=IF(A2<0.4,1,0)

に変更する。つまり、最初の4回だけコインの表が出る確率が40%になったのである。すると、予想通り、5つのピークの大きさは非対称になり、全体の平均値も50からずれる結果となった。

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同じようにB列1~4番目の確率を30%、20%、10%という風に変えると、分布はますます左側に偏っていく。

f:id:kyuusyuuzinn:20191027231316j:plain

例えば、【条件5E-4】では、右側のピーク2つが完全に消えて、真ん中のピークもかろうじで見える程度である。そして、大部分のデータが計算値10か30の付近(つまり、最初の5回のトスで表が出た回数0か1のデータ群)に集中している。

【条件6】 生まれ&育ち重視モデル

【条件5】は、最初の数回のコイントスの結果によってその後の結果が大きく左右されるというモデル、つまり、生まれた時の環境によってその後の人生が決まってしまうというモデルであった。しかし、現実の人生では、「生まれ」と同時に「育ち」もまた重要である。以降では、そのようなケースについて考えてみたい。

そのためにまず、上で見た【条件5E-4】をさらに変形してみよう。B列の上から1~4番目までは、

=IF(A2<0.5,1,0)

とし、5~19番目を

=IF(A6<(0.5+(AVERAGE(B$2:B$5)-0.5)*0.8),1,0)

とする。ここまでは前と変わらないのだが、20~100番目を

=IF(A21<(0.5+(AVERAGE(B$6:B$20)-0.5)*0.8),1,0)

とするのである。つまり、20回目からラストまでの表が出る確率は、5~19番目までに表が出た回数によって規定される。模式図で表すと次のようになる。

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最初に1~4番目のコイントスが行われ、表が出た回数によって5~19番目の確率が5パターンに分かれる。その状態で5~19番目のコイントスが行われ、そこでたくさん表が出れば出るほど、20番目以降に表が出る確率が上がる。

「表が出る確率」を「人生で成功する確率」に置き換えて考えてみれば分かりやすいだろう。20番目以降に上手く表を引き当てるためには、5~19番目でたくさん表を出しておかなければならない。そして、そのためには1~4番目で「スタートダッシュ」に成功していることが重要なのである。だが、仮に「スタートダッシュ」に失敗したとしても、5~19番目である程度までは挽回可能。逆に言えば、1~4回目で上手くいっていても、5~19回目に油断してるとヤバい、というモデルである。

さあ、グラフはどんな感じになっているだろう。

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「生まれ」に由来するピークは、5~19番目の「育ち」の期間でならされて、右側に大きくテーリングした1本のピークとなった。

(本記事では詳しく述べないが、このピーク形状とそれが得られるまでの過程は、HPLCなどの分離カラムでピークがテーリングしてしまう理由を実に簡潔に説明しているものである。)

この形状を一番最初の【条件1】と比較してみると興味深い。実測値(ここではコイントスで表が出た回数)を横軸に、分布が正規分布に従っていると仮定した場合の期待値を縦軸にとったグラフを、Q-Qプロットと言う。詳細な説明は省くが、このプロットがy=xの直線状に並んでいればいるほど、その分布は正規分布に近いということが言える。

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【条件1】と【条件6E-4】でQ-Qプロットを比較してみると、前者はほぼ正規分布に従っていることが分かるのに対し、後者は直線y=xの下側にズレている。このような形状は、各値が対数正規分布に従って分布している時に見られるものである。

現実世界で正規分布を示すものには以下のようなものがある。

  • サイコロで出た目
  • ブラウン運動による粒子の移動距離
  • 大人の身長

一方、現実世界で対数正規分布に従う関係性には、次のようなものがある。

  • 人の所得
  • 市町村の人口
  • 各国のGDP

【条件6E-4】のy軸に、国数・市町村数・人口などを置き、x軸にGDP・市町村人口・年収などを置いてみるとなるほどと思うであろう。

この日本でたくさんの賃金を得るためには、良い教育を受けて知識や技術を身につける必要がある(育ち)。そしてそのためには、生まれた時の環境、つまり親の年収・遺伝子・才能等(生まれ)が重要となる。

国の経済活動が盛んになるためには、その国が建国してから今日まで常に発展し豊かになっていなければならない(育ち)。そのためには、その国の置かれた環境、つまり、肥沃な土壌・温和な天候・河川や山や海の配置・周辺国との位置関係など(生まれ)が重要となってくる。

「生まれ」は絶対ではなく、「育ち」で挽回することもできるが、あまりにも生まれた時の環境が悪いと挽回するのは難しい。「生まれ」が良くてもその後に没落することもあるが、やはり「生まれ」が良いほどその後の物事が上手くいく可能性が高いこともまた事実である。

【条件7】 教育機会均等モデル

生まれによって生じた格差を解消するためにはどうすれば良いだろう。1つ目の方法として、どんな家庭で育ったとしても同じように教育機会を平等に与えるということが考えられる。

【条件6E-4】のB列5~19番目を

=IF(A6<(0.5+(AVERAGE(B$2:B$5)-0.5)*0.6),1,0)

に変更する。【条件3】のところでチラッと述べた「確率の変動幅を規定する定数」を0.8から0.6に変えたのである。

この値を小さくすると、1番目から4番目までに出た表の数に関わらず、5~19番目の確率はだいたい同じくらいになる。

実際にグラフを見てみると、標準偏差が小さくなり、格差が解消していることが分かる。

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【条件8E-4】 累進課税モデル

もう一つ、格差を解消するやり方として累進課税が考えられる。

【条件6E-4】のB列20番目以降を

=IF(A21<(0.5+(AVERAGE(B$6:B$20)-0.5)*0.6),1,0)

に変更する。こうすることで、「生まれ」と「育ち」に起因する確率の差はある程度小さくなるので、所得の多い人ほど所得税率を上げる累進課税が行われていることと同じ効果がある。

この場合もやはり、ピーク幅が狭まり、格差が小さくなっていることが分かる。

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まとめ

このように、エクセルのRAND関数で乱数を作っておき、それを色々な関数で処理してやることで、様々なタイプのデータ分布を作り出すことができるのが面白い。

ただし、本記事の内容は私がエクセルを使って色々遊んでみた結果を考察しているだけであって、統計学的に厳密な議論をしているわけではないので、注意願いたい。

もし、何か内容に不備、あるいは他にもこういうモデルがあるんじゃないかといったアイディアがあれば、コメント欄かブックマークで教えてほしい。

  • 参考文献:古田徹也著『統計分布を知れば世界が分かる』(中公新書